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処方箋9:どうすれば骨をつよくすることができますか? [医療]

処方箋9:どうすれば骨をつよくすることができますか?

骨粗鬆症治療は日進月歩です。私が整形外科の医師になってから四半世紀が経過して、さまざまな治療薬が開発されてきました。
 その間、患者さんの思いは一つ。
 「寝たきりになりたくない!元気に歩きたい!」ですよね。
 寝たきりの原因になるのは、大腿骨頸部骨折や脊椎圧迫骨折など骨粗鬆症の影響で骨が脆弱(ぜいじゃく)化しておきる骨折です。
 どうすれば、骨を強くして骨粗鬆症性の脆弱性骨折を防ぐことできるのでしょうか?
骨粗鬆症とは、破骨細胞による骨吸収が亢進し,骨芽細胞による骨形成がそれを補塡しきれず,骨量が減少することです。
 骨粗鬆症治療薬は,主な作用から骨吸収を抑制する「骨吸収抑制薬」と,骨形成を促進する「骨形成促進薬」とにわかれます。
・骨吸収抑制薬:窒素含有ビスホスホネート(BP),抗RANKL抗体,女性ホルモン,選択的エストロゲン 
受容体モジュレーター(SERM),カルシトニン
・骨形成促進薬:副甲状腺ホルモン,抗スクレロスチン抗体
・そのほかの薬剤:活性型ビタミンD3,ビタミンK
では、どのように薬剤を使い分ければいいでしょうか?
 治療薬は「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」で椎体骨折抑制効果の評価がAの薬剤,およびそれと同様の評価と考えられる以下の6種類の薬剤から選択します。
BP(アレンドロネート,リセドロネート,ミノドロネート,イバンドロネート,ゾレドロネート),デノスマブ,SERM,テリパラチド,ロモソズマブ(抗スクレロスチンモノクローナル抗体
,エルデカルシトール
骨折リスクに応じた薬剤選択
・骨折リスクが低い例 ⇒SERM(女性のみ)あるいはエルデカルシトール
・骨折リスクが高い例 ⇒BPあるいはデノスマブ
・骨折リスクがきわめて高い例 ⇒ テリパラチドあるいはロモソズマブ

そして、患者さんの状態に応じて、逐次治療をおこなっていくのです。
推奨される逐次投与
・テリパラチド(投与期間は2年間)⇒ BPあるいはデノスマブ
・ロモソズマブ(投与期間は1年間)⇒ BPあるいはデノスマブ
・デノスマブ(投与期間に制限なし)⇒ BP

この中で、注意しなくてはならないのは、デノスマブ、ロモスマブ投与中の低カルシウム血症、テリパラチド投与中の高カルシウム血症です。これは、注射後に定期的な採血を行い評価していきます。
そして、骨粗鬆症の治療にはゴールが大切です。
治療のゴール
① 治療期間に骨折発生がなく,骨密度Tスコアが-2.5(YAM 70%)よりも高値

②目標達成後の休薬はBPのみ可能

③2~3年おきに骨密度,骨代謝マーカーを評価する

というわけで骨を強くする治療については様々な方法があるのですが、骨粗鬆症のタイプに応じて最適な治療薬を選択することが必要です。そして、それぞれ副作用もあるので、定期的なフォローアップが必要となります。
 また、急に治療をやめると骨密度が治療前の状態に戻るだけでなく、骨折をしやすい状態になることもあるので、主治医とよく相談して長い目で治療をしていくことが大切ですね。
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